現場では、狭いスペースでの設置や、複雑な配線の取り回しが求められることが多く、これが計測作業の大きな障害となることがあります。また、計測機器が大きくて重いと、頻繁な移動が必要な現場では効率が悪くなり、さらに、過酷な環境下での耐久性も重要な要素です。これらの課題により、正確なデータ収集が難しく、エンジニアは作業効率の低下や誤差の増大に頭を悩ませています。
キーエンスのマルチ入力データロガー「NRシリーズ」は、特に狭所や省配線が必要な状況で、その真価を発揮します。NRシリーズがどのようにして計測の課題を解決し、エンジニアの作業を革新するのかを詳しく解説します。
計測現場を縛る「サイズ」と「配線」の物理的な課題
近年、技術の進化によりこれらの制約を克服するための新しいソリューションが模索されていますが、依然として多くの現場ではサイズと配線による制約が大きな課題として残っています。
重くて大きい計測器が招く「準備の停滞」
従来の高性能ロガーは、高精度と引き換えに大きく重いものが一般的でした。持ち運びには台車が必要で、設置場所の確保だけでも一苦労。特に、設置条件や計測条件が刻々と変わる現場では、この「移動と設置の大変さ」がネックとなり、計測作業がスムーズに進みにくい原因となっていました。
PCフリーズと電源確保の呪縛
計測現場でのPCを介したデータ収集には、常にリスクがつきまといます。
- 動作不安
長時間計測中のOSフリーズによるデータ消失。 - 環境
油や粉塵が舞う現場に高価なPCを持ち込めない。 - 設置性
電源確保やPCの置き場所を優先するため、本来測りたいポイントにロガーを置けない。
NRシリーズが実現した「クラス最小・最軽量」
NRシリーズは計測器を「ポータブルツール」へと変身させます。多チャンネル機能を維持したまま、クラス最小・最軽量(※)のハンディサイズを実現しました。
※ 2026年4月時点、当社調べ。多入力データロガーとして。
メモリレコーダ級の機能を凝縮した超小型設計
NRシリーズは、従来の大型メモリレコーダにも劣らないスペックを両立させています。その設計思想の核にあるのは、計測の準備から解析、レポート作成までの全工程を最短距離で結ぶための機能集約です。
具体的には、マスタユニットを中心に、用途に応じた計測ユニットを横に連結していくスタイルを採りながらも、各ユニットは徹底的に小型化されています。従来の大型計測器であれば台車が必要だった多チャンネル計測システムを、片手で持ち運べるサイズにまで凝縮することに成功しました。
輸送コストと手間の削減
NRシリーズはハンドキャリー(手持ち)での持ち出しが可能です。飛行機や新幹線の移動でもカバンに収まるサイズであるため、配送の手間やコストを削減できます。持ち運びの自由度が高まることで、計測器は「エンジニアのポータブルツール」へとその存在価値を変容させています。
PC不要の「スタンドアロン計測」が現場の機動力を最大化する
NRシリーズが現場の機動力を高めるもう一つの柱は、PCを介さずに計測を完遂できる「スタンドアロン計測」です 。
現場で即座に波形確認。PCレスの快適性
本体に搭載された高機能コントロールパネルを使用することで、PCを使用せずに計測設定からデータの収集、波形確認までを行うことができます。
スペースが限られた車内試験や、PCを持ち込めないクリーンルーム、あるいは過酷な屋外環境でも、NRシリーズなら本体を置くだけ。異常波形を見つけたら、その場で設定を変更して再計測するといった、現場完結型のワークフローを実現します。
車載試験の現場において、NRシリーズがどのように活用されているのか、現場のリアルな解決事例については以下で詳しく紹介しています。

電源トラブルからデータを守る保護
- ミラーセーブ機能
PC接続でデータ収集を行う場合、計測データをPC側とSDカードへ同時に保存できます。2系統で保存することで、万が一PCとの接続が切断しても、本体(SDカード)側にデータが残ります。 - マイクロUPS(無停電電源)回路
バッテリ電源ユニットを使用することでUPSとして運用でき、不慮の電源瞬停時でもデータを保護できます。さらに、独自のアルゴリズムとマイクロUPS回路により、停電やケーブル脱落などの予期せぬ電源トラブルが発生しても保存処理を実行し、計測データ消失の危険性を低減します。
キーエンスの公式サイトでNR-Xシリーズについてより詳しく知りたい方はこちら
UPS回路とミラーセーブによる保護の仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。

狭所・省配線を支える「リモートユニット方式」
NRシリーズの技術的優位性の核となるのが、アナログ配線の常識を変えたリモートユニット方式にあります。
配線距離を最小化し、ノイズを遮断
NRシリーズのリモートユニット方式は、センサーのすぐ近くに小型の計測ユニットを配置し、そこからマスタユニット(データロガー本体)までは専用のリモートケーブル1本でデータを伝送するシステムです。数十本のアナログケーブルを引き回す手間を排除しました。
マスタユニットとリモートユニット間は最大60m(システム全体の総延長は最大100m)まで延長可能でありながら、最速1μsという極めて高い精度で時刻同期が行われます。センサー至近でデジタル変換を行うため、長距離アナログ伝送で避けられなかったノイズ混入のリスクを最小化し、クリーンなデータを取得できます。
リモートユニットについては以下の記事で詳しく解説しています。

プッシュ式端子台で配線工数を削減
ユニットには「プッシュ式端子台」を採用。ネジ締めや緩み確認が不要で、線を差し込むだけで配線が完了します。プッシュ式端子台により、電圧入力ケーブルやひずみゲージなどを数十チャンネル分接続する際の配線作業時間を大幅に短縮できます。また、ネジの締め忘れや振動による脱落というケアレスミスを構造的に排除できるため、信頼性の向上も期待できます。
過酷な環境を「測定室」に変える耐環境性能と映像連携
NRシリーズは、ラボの中だけでなく現場そのものを信頼性の高い測定環境へと変貌させます。
- 耐環境ユニット
IP65/67の防水・防塵性能に加え、-40℃から+85℃の動作温度範囲に対応。恒温槽内やエンジンルームへの「ポン付け」設置を可能にします。また、JIS自動車振動規格をクリア。車載試験や建機の実働試験でも、振動による接触不良や故障の不安がありません。 - データ×映像の連動記録
小型カメラ(NR-CM01)と波形データを連動。不具合が発生した瞬間の挙動を、数値と映像の両面から即座に特定できます。
キーエンス「NRシリーズ」の持ち運びや設置に関するよくある質問
- PC不要で計測できるというのは具体的にどういうことですか?
-
本体のみで、計測設定からデータ収集、波形確認まで完結できるということです。PCが不要なため、以下のような環境や状況で役立ちます。
- スペースが限られた車内試験 ・油や粉塵が舞う現場、PCを持ち込めないクリーンルーム
- 異常波形を発見した際の、その場での設定変更と再計測
まとめ:機動力が生み出すエンジニアの付加価値
NRシリーズは、そのコンパクトなサイズとPC不要のスタンドアロン計測機能により、どんな環境でも柔軟に対応できる優れた機動力を持っています。
NRシリーズを導入することで、これまで数日かかっていた準備・配線工数が短縮され、PCレスの機動力が「思い立った瞬間に計測」できる環境を実現します。この機動力によって生み出された時間は、より深いデータ解析や、次世代製品のアイデア創出といった、人間にしかできないクリエイティブな活動へと転換されるはずです。計測器の進化は、単なるスペックの向上ではなく、エンジニアの働き方そのものを変え、効率化・DX化を進める第一歩です。
NRシリーズの製品概要や他社製品との詳細なスペック比較については、以下の記事で詳しく解説しています。


NR-X シリーズの特徴
- リモートユニット計測:専用ケーブル1本で接続。大型設備や車両の配線工数を大幅に削減
- データ連動カメラ:波形と映像が連動。異音や挙動の因果関係を誰でも可視化
- 最大576ch計測:センサー付近に計測ユニットを配置しノイズを抑制。大規模計測も1台で完結

