製造現場で不具合の原因を特定する際、「波形データで異常は見つけたが、現場で何が起きていたのか分からない」という課題はないでしょうか?波形と映像を別々に確認する従来の連動不具合解析は膨大な工数がかかり、研究開発・現場担当者の生産性低下を招いていました。
キーエンスのデータロガー「NR-Xシリーズ」は、「データで変化を探し、映像で理由を見つける」という全く新しいアプローチで、不具合解析の属人化や効率低下という課題を解決します。波形とカメラ映像を連動させることで、原因特定の時間を劇的に短縮できます。
本記事では、NR-Xシリーズがどのようにして不具合解析を効率化し、ビジネスに貢献するのか、その具体的な技術と改善事例を詳しく解説します。
なぜ波形データだけでは不具合の真因が見えないのか?
数値データだけの解析の限界
産業機械や設備の不具合解析において、データロガーが収集する波形などの数値データは重要な情報源です。しかし、数値データは機械の動作状態を示すものの、その背後で実際に何が起こっているかを直接的に捉えることができません。そのため、波形と現場の状況を照らし合わせる連動不具合解析が必要になりますが、従来の環境では映像やカメラ連携による統合が不十分であり、原因の特定を困難にするとともに、報告の際の説明も難しくしていました。
膨大なログとの格闘
産業現場で使用されるデータロガーは、機械や設備の動作を詳細に記録するために膨大な量の波形データを収集します。ログデータは多岐にわたる信号やセンサーから収集されるため、解析担当者は大量のデータの中から異常箇所を特定し、さらにその対象物に変化が起きたときの映像を探し出すという大変な手間がかかっていました。
属人化するトラブルシューティング
現場における不具合解析は、操作者や解析担当者の経験や勘に大きく依存する側面があります。従来の計測器は設定や操作が難しく専門知識が必要であったため、トラブルシューティングはしばしば属人化し、ベテラン技術者の「勘」に頼る状況が常態化しています。さらに映像を活用した状況把握が不可能な環境は、解析担当者の負担を増大させる要因となります。
次章では、NR-Xが実現する「データと映像の連動」がどのようにこの課題を解消するのかを詳しく解説します。
NR-Xシリーズが実現する「データと映像の連動」
1クリックで波形と映像がリンクする
NR-Xシリーズ最大の価値は、データと映像が連動しており、見たい箇所を選択するだけでデータに連動した映像が確認できる直感的なインターフェースにあります。不具合が発生した瞬間の波形をクリックするだけで、データに連動した映像が確認でき、メカ的な干渉や振動の真因を瞬時に特定が可能になります。この直感的な同期機能により、「映像を探す」という手間がなくなり、わずか数秒の1クリックへと劇的に短縮され、圧倒的な業務効率化をもたらします。
耐環境・小型の専用カメラによる柔軟な現場設置
NR-Xシリーズは、専用の「データ連動カメラ(NR-CM01)」を用意しています。試験環境全体や狭い場所、クーラントや粉塵が飛散する悪環境での撮影は従来困難でしたが、NR-Xシリーズのカメラは保護等級IP67の耐環境仕様を備えた小型設計であり、設置場所を選ばずに撮影が可能です。用途に合わせて選べる3つのラインナップは、以下の通りです。
| カメラタイプ | 推奨用途 | 特長 |
|---|---|---|
| 標準タイプ | 手元の微細な動き | 部品の引っかかりや微細な挙動を確認 |
| 広視野タイプ | 設備全体の俯瞰 | ライン全体のタイミングや大きな動きを確認 |
| 遠距離タイプ | 離れた場所からの撮影 | 設備に近づけない危険箇所や広範囲をカバー |
波形と映像が連動することによる確実な検証
NR-Xシリーズは、波形データと映像を連動して保存することが可能です。そのため、「この波形の跳ねは、部品の引っかかりによるものか」といった現象と数値のズレを排除し、確信を持った解析が可能になります。データと映像が連動したファイルを共有することで、報告時の説明も簡単に行えます。
キーエンスの公式サイトでNR-Xシリーズについてより詳しく知りたい方はこちら
不具合解析を「推測」から「確信」に変える技術
NR-Xシリーズが提供するデータ×映像の連動は、単に動画と波形を並べて表示するだけのものではありません。過酷な現場やシビアな開発環境において、エンジニアが直感的に、そして確実に原因へ辿り着くための、NR-Xシリーズならではの高度な技術が存在します。
- イベント録画機能
しきい値を超えたタイミングをトリガーにして、変化の前後だけを狙って記録・撮影することが可能です。トラブル発生の瞬間を逃さず確実に捉えるための強力なサポートとなります。 - 多チャンネル波形とマルチアングル映像の同時検証
電圧、電流、温度、ひずみ、加速度など多様な物理量データを1台でマルチに計測・統合管理できます。最大576チャンネルまでの拡張性を持ち、最速1μsという高い同期精度で各信号を収集できるため、複数の要素が絡み合う複雑な不具合メカニズムを多角的に分析できます。 - タフな筐体と安定したデータ保存
IP65/67の防水・防塵性能、-40℃から+85℃の耐温度性能、100Gの耐衝撃性能を持つ耐環境ユニットにより、過酷な製造現場でも安定稼働します。また、PCとSDカードへのデータの2重保存(ミラーセーブ)機能や、UPS(無停電電源装置)機能としてのバッテリ動作を備え、不慮のPCフリーズや電源瞬停によるデータ消失を防ぎます。
映像だけでなく、温度やひずみ、車載ネットワークのCANデータなど、異なる性質のデータを自在に組み合わせる「マルチ入力」の詳細は、こちらの記事をご覧ください。

【改善事例】NR-Xシリーズの波形・映像同期機能による成果
破断・クラック発生の瞬間特定
材料の引っ張り・曲げ試験などでは、荷重やひずみの波形に急変が出ても、従来は「その瞬間に何が起きたか」を映像で同時に確認できず、破断の起点や進展は推測になりがちでした。NR-Xシリーズのデータ連動カメラで波形と映像を連動すると、ピークや段差をクリックするだけで該当シーンへ即ジャンプ可能。治具当たりによる欠け、クラック先行などを事実として押さえられ、追加試験や再現待ちを減らして解析と対策を短縮できました。
自動組み立てラインのチョコ停 真因特定
自動組み立てラインのチョコ停は、PLCログに停止信号が残っても、現場映像と時刻が合わず「波形の立上りがどの動きに起因するか」を断定できないことが課題でした。NR-Xシリーズのデータ連動カメラで設備信号と映像を連動記録すると、停止タイミングの波形ポイントから瞬時に映像を確認可能。ワーク姿勢崩れや供給詰まり、配線干渉などの原因を早期特定でき、再現待ちをすることなく復旧し対策することができました。
本記事で紹介した事例のほか、データ連動カメラの導入事例については、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ:NR-Xシリーズがデータロガーの概念を変える
キーエンスのNR-Xシリーズは、カメラ連携による「波形と映像の連動」を実現しました。「データで変化を探し、映像で理由を見つける」というシンプルなコンセプトが、推測に頼っていたトラブルシューティングを、確信を持ったスピーディな解析へと変革します。
煩雑だった連動不具合解析を圧倒的に効率化し、製品の品質向上や開発サイクルの短縮を実現するNR-Xシリーズ。データロガーの概念を一新し、業界標準を引き上げるこのシステムは、現場の大きな武器となるでしょう。
NR-Xシリーズの製品概要や他社製品との詳細なスペック比較については、以下の記事で詳しく解説しています。


NR-X シリーズの特徴
- リモートユニット計測:専用ケーブル1本で接続。大型設備や車両の配線工数を大幅に削減
- データ連動カメラ:波形と映像が連動。異音や挙動の因果関係を誰でも可視化
- 最大576ch計測:センサー付近に計測ユニットを配置しノイズを抑制。大規模計測も1台で完結

